先日、経口免疫療法にて牛乳を飲んだ子供が重篤な状態に陥ったとニュースがありました。
「食べて治す」治療と言われている経口免疫療法は、アナフィラキシーなどの危険性から病院で行う期間、自宅で行う期間それぞれで注意すべき点が多くある免疫療法です。
なぜそのようなことになったのだろう。。と思いますが、この治療を受けるには、きちんと注意点を理解することが大切なのだということは確かだと思います。
経口免疫療法とはどのような治療なのか、対象アレルゲンや年齢、食物アレルギーが治るのか?についてご紹介します。
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経口免疫療法とは?
経口免疫療法とは、食物アレルギー治療の免疫療法の一つで、減感作療法とも呼ばれています。
アレルゲンを少量ずつ食べていくことで、徐々に体に慣れさせていく方法です。
まさに「食べて治す」治療ですね。
以前は、アレルゲンとなる食物を除去する方法しかありませんでしたが、経口免疫療法はアレルゲンに慣れていくことで、アレルギー症状が緩和していくという”アレルギーを治す”ための治療となります。
この治療を受けるためには、医師の判断のもと、入院もしくは外来で治療を始める必要があります。
徐々に食べれるようになれば、一生アレルギーによる食物除去で苦労しなくてもすみますので、とてもいい治療に思えますが、いろいろと制限があります。
緩徐免疫療法と急速免疫療法
経口免疫療法には、”緩徐免疫療法”と”急速免疫療法”という2種類の方法があります。
緩徐免疫療法はゆっくり時間をかけて治療し、急速免疫療法は比較的早い期間で治療を行います。
- 緩徐免疫療法(半年~数年)
- 急速免疫療法(数か月~半年)
期間だけみると「早く終わる方がいいじゃないか!」と思いますが、短い期間での治療は、治療中にアレルギー症状がでやすいため、ゆっくりの方が安全性が高いと言われています。
また、アレルギー症状の重さによって、適応できる方法が変わりますので、どちらを行うかは年齢や症状を判断して医師との相談になります。
経口免疫療法の進め方
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では、実際にはどのような治療になるのかを見ていきましょう。
1.食物経口負荷試験でチェック
食物経口負荷試験によって、アレルギーが発症する上限量を確認した上で治療を始めます。
初めはアレルギー発症のリスクが高いため、入院もしくは外来で治療を始めることとなります。
2.増量期
一定量まで食物を食べる量を徐々に増やしていきます。
3.維持期
一定量まで達したら、引き続きその量の摂取を継続します。
4.食物経口負荷試験で再チェック
維持期のあと、一定期間食物除去を行ってから、負荷試験にて食べても大丈夫か確認を行います。
その後は医師の指示に従い、自宅などでの食べれる量や範囲について徐々に増やしていきます。
各期間は緩徐免疫療法か急速免疫療法によっても変わってきますが、病院や本人の状態によっても変わるようです。
なんの食物アレルゲンに効果がある?
現在、治療対象となっているアレルゲン食物は、
- 鶏卵
- 牛乳
- 小麦
- ピーナッツ
- 大豆
- 魚
などです。
大人に多い、甲殻類アレルギーについては実施できません。
大人はできるの?対象年齢は?
この治療法は、実は大人向けではないんです。
対象年齢は4歳から20歳までです。
一番向いているのは4~6歳の子供です。
その後は、学校へ通う年齢となりますので、アレルギー症状がでた場合の対応が難しくなることや、体育の授業などでアナフィラキシーを発症する可能性もあがるため、現実的に難しくなってきます。
また、3歳までの幼児に関しては、アレルギー発症時にエピペンを投与できないので難しいとされ、大人になってしまうとアレルゲンが複数ある可能性もあり、あまり治療の効果が期待できないようです。
保険適用と費用は?
経口免疫療法は保険の適用があります。
入院と通院によって費用は異なりますが、入院時は10万円前後、通院時は2~3万円と言われています。
ただし、経口負荷試験の時と実際の治療時で金額が異なりますので、はじめにきちんと確認しましょう。
経口免疫療法で食物アレルギーは完治するのか?
どの程度の確率で治るのかは、年齢や対象食物でも異なりますが、治った患者の割合は、
- 卵:38%
- 牛乳:10%
- 小麦:50%
とあまり多くないのでは、と思ってしまう確率です。
そして、こわいことに30~50%の人が重症の副作用を経験しているというのです。
経口免疫療法は危険なのか?
この治療法は危険なのか?と聞かれると、やはり「気を付けて治療をしないと危険です!」と言わざるを得ないでしょう。
実際にアレルゲンを食べるわけですから、アレルギー症状が起きる可能性は高いんです。
そして、食物アレルギーの場合、アナフィラキシーを起こす可能性もあります。
もちろん、湿疹や蕁麻疹などの症状で治まる場合はまだいいのかもしれませんが(それでも十分ツラいですが)、呼吸困難などになった場合の対処が必要となります。
自宅で食べてもいい段階に入るには、ある程度の期間が必要となりますし、きちんと注意をしていれば大丈夫なのかもしれませんが、お子さんの場合、間違ってたくさんの量を食べてしまうことだってないとは言えません。
ですから、この治療を受けている人は、外来や入院時と異なり、自宅でアナフィラキシーの対処をする場面に直面するケースもありますので、エピペンなどの自己注射薬を手元に置く必要があります。
そのようなリスクがあることをきちんと理解して、治療をはじめる、治療を続ける必要性があるということです。
この治療については、推奨していない病院もあります。
一般的には小児科もしくはアレルギー科で行うことができる治療となりますが、事前にこの治療法を行っているかを確認してから行くようにしましょう。
アナフィラキシーについてはこちらから♪
⇒アナフィラキシーの症状とは?エピペンが必要?起きたときの対応、処置は時間が勝負!
経口免疫療法によって重篤な症状がでた事例について
先日、牛乳の経口免疫療法を行っていた子供が、治療中の”維持期”に決められた範囲内の量の牛乳を飲んで、低酸素脳症になりました。
今までこの治療を行い、アナフィラキシーなどの症状はでたケースはありますが、ここまでの重篤症状になったケースはなかったようです。
これをうけて、日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会では注意喚起をしました。
ガイドラインには、「経口免疫療法を食物アレルギーの一般診療として推奨しない。」などの項目もあり、やはりリスクを伴う治療法なのだな。とあらためて思います。
まとめ
経口免疫療法は、画期的な治療法としてリスクはあまり注目されていない時期がありました。
現在はリスクも考慮して、治療を行う際には万全の対策をとれる準備が必要とされています。
興味がある方は病院で詳しく聞いてから始めてくださいね。
食物アレルギーについてはこちらから♪
⇒食物アレルギーの原因は?アレルゲンとなる食品の種類はなに?
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